hitschiの日記

毎日少しずつでも、進化したい!

人の声がこんなに心地がいいとは 

相変わらず、四十肩の痛みが続いていて、寝ても覚めても痛くて、どうにも元気が出ません。

 

整形外科に行ったり、整体に行ったり、いろいろな人に聞いて対処を試みてはいますが、まあ、最終的には、日にち薬なのでしょう。経験者の方にお聞きすると、半年から一年半ぐらいで痛みはなくなるみたいなのですが、この痛み、少なくともあと数ヶ月は続くのかと思うと、やっぱり気持ちは上がらないです。

 

そんな中で、最近、すっかりはまっているのが、オーディブルで本を聞くことです。

 

小説を読むと、頭の中だけでもこの「痛い」現実から離れられて癒されます。

 

読書は、本当は紙の本で読むのが一番好きです。でも、去年からリモートの活動が増えたせいか、急に老眼が進んでしまい、乱視がひどくなりました。夜とか、疲れていたり、元気がなかったりする時には、リーディング眼鏡をかけても、文字が二重に見えて、読むのに結構エネルギーがいるようになりました。

 

それで、耳で聞く読書をするようになったんです。

 

これまでも、じっくり本を読む時間がないときは、Kindleで本を購入して、読み上げ機能を使って本を聞くということを、時々やっていました。

 

Kindle Fireの端末だと読み上げ機能があるし、iPhoneAndroidでも、読み上げを設定することができます。いずれも、機械的な声でたんたんと読み上げられるのを聞くのですが、最近はかなり聞きやすくなってきました。なかでも、一番聞きやすかったのは、Androidスマホトークバック機能です。

 

時々、読み間違いなどもあって、「え? 今、なんて言ったの?」ということもあるんですが、まあ、聞いていて中身がわからないっていうほどでもないし、結構使えます。

移動しながら、あるいは、家事など何か手を動かしながらでも本を聞くことができるので重宝していました。

 

だから、オーディブルという、人が朗読したものを録音された本を購入できるものがあるというのは知っていても、Kindleの読み上げで十分じゃん、とずっと思っていたんです。

 

というのも、オーディブルは、朗読の作業と手間が入っている分、お値段が通常の書籍を買うよりもかなり高額だと感じていたからです。

 

ところが、今年の夏、わたしが大好きな作家の川上未映子さんの新刊が、オーディブル専用の小説として発行されたんです!

 

しかも、この小説、オーディブル専用の小説とのことで、紙の書籍の発売がないのです(もしかしたら、将来発売されるかもしれないですが)。新刊が出るたびに川上未映子さんの本を追っかけてきた私としては、オーディブルでしか発売されないのであれば、もはや、オーディブルに挑戦するしかありません!

 

 

 

これが、本当に、とてもよかったんです!

 

本を読むたびに、感想を投稿しているTwitter (読書メーター)の私の感想は以下のとおり。

 

 

一人称で語られる小説を、朗読しているのが、女優さんということがよかったのかもしれません。小説を読んでいるのではなく、登場人物が自分の手記を読んでいるかのようで、一人芝居の演劇を見ているような感覚でぐっとひきこまれました。

 

なんというか、読書を超えた読書体験だったんです!

 

ある意味、朗読劇を見ているような、頭の中に演劇が展開されるような感じです。ただ、本を読んでいるということ以上の楽しさがあります。

 

収録されていた6つの短編もいずれも素晴らしいものだったということもあります。いずれもコロナ禍がはじまった去年の春の時期を舞台にした物語。特にわたしのお気に入りは、二番目の「あなたの鼻がもう少し高ければ」と六番目の「娘について」です。

 

「あなたの鼻がもう少し高ければ」では、この社会で女性として生きていく以上、容姿のよしあしについては敏感にならざるを得ない、私たちの容姿にまつわる感受性について、かなりあからさまに描き出されます。

 

私たち自身、人間は中身が大事といいつつも、実際のところ、容姿によってを判断してしまっています。だから、整形によって、自分に価値を付け加えようと試みようとする人がいて当然です。しかし、整形によって容姿に価値を与えるということも、それほど簡単なことではなく、そこにはまた元々の顔の造形に手を加える際の、美的センスのようなものが必要で、それがうまくできた人とそうでない人の間には、やっぱり容姿のヒエラルキーが形成され続けます。

 

生きていくって、さまざまな過酷な現実の中に晒されながらも、私たちが在るってことなんだなあとつくづく思います。小説は、そういう現実のある部分をクローズアップして見せてくれて、自分も、その中の一人であることに改めて気づかせてくれます。

 

それは、自分が目の前のつらいことに過集中してしまっている状態から、視野を広げてくれることにもつながります。だから、辛い時に読むと癒されるような気持ちになるんだと思います。

 

「娘について」では、母娘の関係に女友達のリアルな感覚、主人公の感情のゆれが手にとるように感じられて、聴きながら緊張しっぱなしでした。まるで、自分に起こった出来事のように体験したように、読み終えた時はすっかり脱力。

 

というわけで、すっかりオーディブルがお気に入りになって、どんどんオーディブルで小説作品を聞いています。

 

最近読んだわたしのお気に入りは、以下の二つ。

 

村田沙耶香さんの『コンビニ人間

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これは、以前、本で読んだときから、大好きでした。本もあるし、オーディブルでわざわざ聞く必要はないかなって思っていたんです。ところが、オーディブルでものすごい数のレビューがついていて、どうにも気になりました。それで、試聴してみたら、大久保佳代子さんの声がなんとも心地よくて、即購入。コンビニ人間としての主人公のたんたんとした様子が、なんともしっくりきてすっかりお気に入りになりました。

 

あと、吉田修一さんの『国宝』、これも、めちゃめちゃよかったです!

歌舞伎役者の物語なのですが、実際に歌舞伎役者のスターの方が朗読されているので、歌舞伎役者さんの生きる世界の中に入ってしまったようでした。この本を聴いている時は、他のことが全く手につかなくなり、三日間ほど、ひたすら聴いていました。知らない歌舞伎の演目でも、実際に舞台を見ているような圧倒的な感覚、小説に出て来た演目、実際に見てみたいなあと思いました!

 

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子どもの頃、私は、親に「本を読んで、読んで」としつこくねだる子どもだったらしいです。あまりに同じ本を何度も何度も読まされることにうんざりした母は、ある日、ついに読み聞かせが嫌になって、カセットテープに吹き込み、わたしは、テープレコーダーで、母の朗読を聞きながら本のページをめくって聞いていました。それから四十数年経って、私は再び本を聴いています。

 

人の声の朗読を聴くのは、心地がいいです。聴いていると、いつの間にか寝ていることもあります。でも、そういう時はなんともいえない至福な時間に感じられます。

 

 

小説を読んでいて、先がどうしても気になってしまうときには、わたしはこっそり先を読んでしまうし、Kindleの読み上げ機能を使っていた時は、話の筋が気になる時はどんどんスピードを上げて聴きます。でも、なぜかオーディブルで本を聴いていると、スピードを上げたいと思えないのです。読む人の息遣いに合わせて、じっと聴いています。先が気になる時は、登場人物の感情とともに、ときに手に汗握ってぎゅっと体を硬くしていたり、涙を流したりしながら、ひたすらじっと聴いています。

 

私の癒しの時間です。