自分とまわりとの違和感を覚えるのはいつからだろう
子どもの時に感じていた世界との違和感を思い出して、切なくなりました
以前、Kindle Unlimited で、エッセイ集『お家賃ですけど』を読んで、気になっていた作家さん、能町みね子さんの小説。
「私小説です、たぶん」という本人のコメントが扉にあります。この、「たぶん」という言葉、読む前には、どういう意味なんだろうと思いましたが、読み終えて、なんとなくですが、「たぶん」という言葉をつけたい感覚が腑に落ちました。
さて、この小説には、5歳のもりなつき君という主人公が生きる世界を彼の視点から、彼が感じることとともに描き出されます。
5歳のなつき君が感じる、まわりの人や世界との違和感。
子どもだって、いや、自分で自由にいろんなことをすることができない子どもだからこそ、強く感じる世界との違和感です。
大人の作者が書いているから、大人の言葉で書かれているのですが、ところどころ子どもらしい言葉遣いや、ひらがながちりばめられていて、なつき君の見ている世界であることがありありと感じられてきます。とても読み心地のいい文章で、なつき君がかんじていることにすんなり共感させてくれます。読んでいくうちに、だんだんと自分の子ども時代とリンクしていくような感覚を覚えました。
小さい頃、わたしも、なつき君と同じように、まわりの子どもたちがあまりに子ども過ぎるんじゃないかと感じていました。また、大人がのぞむ子ども像を演じなければならない窮屈さと、大人が自分を子ども扱いすることに対しての苛立ちも感じていたように思います。
最近は、年を取っていくことで、どんどん老化していく自分を嘆くことが多かったのですが、この本を読んでいて、大人になって自由になったこともたくさんあるなぁと気づきました。
なつき君は、これから、大人になって様々なことを自分の思い通りにできるようになるまで途方もない時間を過ごさなければならないのです。そう考えると、なんだかとても胸が痛みました。
これは、ある種の青春小説のようなものなのかもしれません。ある種、純粋無垢でいられた自分の過ぎ去ってしまった過去への郷愁を感じながらも、もはやその時には戻りたくない現在の自分をかみしめる、そんな感じです。
読後感は、悪夢ほどではないけれど、ちょっと苦しいような寂しいような夢から褪めたような感覚。
好きだなぁと思いました。
大人になっても世界との違和感を感じ続けている人にオススメしたい!
昔と比べると成長している自分に気付くことができるんじゃないかな。
こちらのエッセイも好きでした。作者の古いアパートへの愛着がとてもいい感じでした。